香天集12月26日 岡田耕治 選
安田中彦
鳴き交はす鶴に無縁な幸福論
風花や存分に生つかひきり
凩が棲むおまへの貌のなか
まどろめば荘子の夢や凍てし蝶
加地弘子
寒林のカコンと音す此の世かな
玄関の冬将軍を抱きしめる
仏壇にどっしり坐りラ・フランス
マグカップの歪みをたどり年の夜
中嶋飛鳥
道なりの曲りはじめる冬の詩
長き夜の言葉に疲れ足叩く
告白のくちびるに触れ雪蛍
背を見せみかんを一つ投げ上げる
夏 礼子
山茶花の白まっさきに曲りけり
冬の蚊を逃がせり情けとは別に
励ましの言葉を少し冬桜
冬りんご私落っこちそうになる
釜田きよ子
眼の中に鬼火の揺れている気配
納豆の糸引く力冬旱
着ぶくれて回転ドアに弾かれる
閉ざされし部屋に広がる枯野かな
前塚かいち
残る柿残せる柿や露地明り
イスラエルの子らの虐殺クリスマス
クリスマス持ち寄る品を迷いたる
月光と星光届きクリスマス
藪内静枝
離陸する窓が捉える紅葉かな
万年のなかの今生実南天
日の温み冬木にもたれ待ちいたる
大根の白せりあがり太り出す
永田 文
夜長し電子音から古傷へ
木の葉髪梳く手に残る思いかな
木枯や通過電車に足踏みす
木々たちが黙を保てり冬の山
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