2021年12月5日日曜日

香天集12月5日 森谷一成、夏礼子、前塚かいち、久堀博美ほか

香天集12月5日 岡田耕治 選

森谷一成
爽やかに赤子の指のほどけたる
秋天やヘリコプターを一尾とし
かんなぎの膝のぽきりと秋深む
次の世へ冷ゆる白物家電かな

夏 礼子
シャガールの絵のなかに居る良夜かな
秋うらら無人の野菜完売す
花石蕗や土間に置かれしスニーカー
立冬の月ポケットの中に穴

前塚かいち
香を散らし踏まれゆきたり金木犀
コスモスの揺れを送らる動画かな
吾亦紅群生場所に精通す
冬隣首だけを出す家の猫

久堀博美
階段の踊り場に居り冬日差
駅からは見渡す限り大根畑
焼芋が香れり出入するところ
想いとは真逆を伝えなめこ汁

釜田きよ子
青天に吊る大根の光かな
冬薔薇しっかり呼吸しておりぬ
メロンパンポロポロこぼし小鳥来る
疑いを捨てた熟柿から落ちる

中濱信子
山茶花の日向と日陰訪れる
柿たわわ下校のベルの届きけり
増えもせず減りもせずして石蕗の花
ほめられし一句ころがし神無月

河野宗子
木犀の香に楽曲の流れくる
鳴き終えてまた新しき虫の声
浴室や満月のよく顔を出し
団栗を空に投げたる幼き手

嶋田 静
捨てられぬ写真のあまた柿落葉
穂すすきの風を呼びこむ庭のあり
とうふ屋の奥まで暗し寒の雨
入り込むコーヒータイム初しぐれ

田中仁美
紅葉狩介護のことを語り合い
布の上にたたずむ虫の影のあり
子らの居ぬ遊具静かに秋の暮
ひとり居の酒屋の主新酒酌む

吉丸房江
ありがとうありのまま言う秋の空
大海を泳いだ鮭をかみしめる
金木犀思わぬ人と出会いけり
コスモスに又来ると告げ能古の島

垣内孝雄
置炬燵かき餅と茶を用意して
クリスマス一人娘の誕生日
花枇杷や辻を曲がりて三軒目
おでん屋の大黒天の赤頭巾
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。

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