香天集1月9日 岡田耕治 選
三好つや子
車体から足の出ている冬日和
木の葉ふる鉛筆の塚虫の塚
白障子空気が起立しておりぬ
線描の野水仙から波の音
柴田亨
冬灯ステンドグラス闇深し
問題は猫の不在と雪催
クレヨンの並びはみ出す落葉かな
家を捨て椿の盛り見ておりぬ
渡邉美保
極月の極楽湯まで自転車と
冬麗の海底にある山と谷
暖炉欲しかの世の祖母の揺り椅子も
ピアニカを拭いている母年の暮
久堀博美
除夜の鐘ひと日ひと日の重なりぬ
風花のここと決めたる着地点
過ぎてゆく刻を豊かに雪だるま
客として湯の響き聞く初鏡
辻井こうめ
キルト着る犬の尾っぽや朝の雪
茹でたまご夢千代像の時雨をり
ふとん干す何でもない日茶碗蒸
皸やバンドエイドの直ぐはづる
宮下揺子
黄落の空やゴッホの澄み渡り
対岸の紅葉に焦がれ犬を曳く
皇帝ダリア背を伸ばし風に乗る
寂聴逝く九九歳は青春
牧内登志雄
初日記書くことのなき幸不幸
したたかに愛を奪ひし冬花火
爺さまのしわぶき一つ寒卵
大寒や空はぱりんと割れる青
垣内孝雄
年立つや猫のごはんにサプリ足す
寺の名と同じバス停冬帽子
色深むドライフラワー年新た
松過ぎの餌を欲る鳶の急降下
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