香天集2月6日 岡田耕治 選
谷川すみれ
曲線は直線を出づ三鬼の忌
いっせいに応えていたり紫木蓮
白梅の光この世にある限り
啓蟄や後ろを見てはいけないと
浅海紀代子
冬晴の中に私を干しにけり
懐かざる猫よ炬燵の客となり
初景色重機の影の伸びて来る
目を上げて見よと木枯窓叩く
釜田きよ子
いささかの油断もあらず鏡餅
焚火果てみな平常に戻りけり
白米のほのかな甘み冬至粥
友だちとおしゃべりしたい雪だるま
久堀博美
番鴨右向けば右向きにけり
一徹の漢が担ぐ冬銀河
声かけており春の土動くよう
春暖炉死は何気なき日の後に
宮下揺子
剥落の釈迦三尊や淑気満つ
バリバリと木の実を踏んで陽射踏む
昼の月離れて座る冬の椅子
冬晴や修行のように歩を進め
吉丸房江
シェフならず主婦の味ですお正月
水仙の香りまっすぐ空に舞う
捨てきれぬものに囲まれ二月尽
コロナ禍を本で追いたる春の旅
垣内孝雄
草青む牛の頭を撫でてをり
探梅やピーナツを足す柿の種
黄水仙あの世この世と云ふ勿れ
しら梅や祇園小路のだらり帯
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