2022年3月20日日曜日

香天集3月20日 石井冴、三好広一郎、久堀博美ほか

香天集3月20日 岡田耕治 選

石井 冴
学校の優等生にほうれん草
紙雛妣の左右に来ておりぬ
シネラリア言霊放つようになり
国籍を問うことのなき朧かな

三好広一郎
留守電に恋の余熱や花の雨
全力にまだまだ余白揚雲雀
眼は瞑るためにあるもの春の爆
受付のインク掠れる花時雨

久堀博美
約束に少し遅れて桃の花
恋の猫こけし倒してしまいけり
髪切って身の内の春呼び覚ます
木の芽あり迫撃砲に色づきぬ

加地弘子
恋猫の思いがけない隣の子
生姜湯や昨日の昼は何食べた
玄関の白菜立ちて置かれたる
啓蟄のポケットからの知らせかな

春田真理子
逝く母に桜の紅の移りけり
花嵐斎場の炉を閉めてより
花筏すくう形に骨拾う
燈明の後ろさくらの水ながれ

砂山恵子
受け止めて歩む道あり水温む
たそがれは野良着の匂ひ雪間草
一部屋に猫と私とかげろふと
風いつも曲線と知る石鹸玉

神谷曜子
復活祭コーヒーの実を噛んでみる
春動く女人埴輪の乳房から
戦ある国の方向き雁帰る
春嵐読みかけの本止まらない

古澤かおる
お性根を抜いた地蔵や黄砂降る
黄砂降る三年日記の同じ日に
雉啼くや男の声のよく通る
白酒も菱餅も入れエコバック

岡田ヨシ子
同じこと語る友いて春炬燵
コーヒーを香らせている春の朝
春社遠くから来るボランティア
丘の上の平家がよろし春一番

中田淳子
春の空宇宙旅行の話など
白梅や今年もきっと忘れない

川村定子
流し雛舳先は沖へ波を切る
古草の根元にのぞく新芽かな

秋吉正子
雛祭り男子三人育ており
春動く鉛筆削る肥後守

北岡昌子
食べたくなる京の老舗の椿餅
はっきりとうぐいすの鳴く声を聞く

大里久代
雛飾りあれよあれよと三十年 
春の海ゆるりと伸びる船の影
*関西空港にて。

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