2022年5月8日日曜日

香天集5月8日 三好つや子、釜田きよ子、久堀博美ほか

香天集5月8日 岡田耕治 選

三好つや子
新じゃがの無垢をポタージュスープかな
山岳古書の店は三階燕来る
黒船が見えそうな日だつつじ燃ゆ
待ちぼうけの魂あまた豆畑

釜田きよ子
ブランコは人待ち顔に揺れており
この世とは笑う場所なり豆の花
泳ぐたび空に分け入る鯉幟
姿勢良きアスパラガスを収穫す

久堀博美
菜の花の盛り過ぎたる重みかな
ひから傘開くや竹の骨光り
まだ続く信号のなき蟻の道
打水や郷里の通りよみがえり

宮下揺子
エープリルフール聴き役を休みとす
いたち草安易な方へ舵を取り
目借時指図したがる子供たち
麦の秋前頭葉をたたきおり

楽沙千子
居残りの生徒数人春蚊出づ
リュックサックの鈴着いて来る春の山
骨折のギブスのままに卒業す
新芽出す朽ちし桜の気力かな

河野宗子
鳥たちの声の段差や春の雲
春帽子選び心を押しにけり
どの家も春のねむりの扉かな
春の道スマートフォンをかざし行く

北村和美
啓蟄やあとさきとなる靴の跡
小指だけ赤いマニュキュア桜蘂
水温むズックの紐の固結び
金髪とピアスの友や夏近し

田中仁美
春の蝶墓より父の現れる
直線の大空つなぐつばくらめ
春の空歩幅合わせる母の腕
養命酒もう一杯と春の宵

垣内孝雄
薔薇の芽の垣根をくぐりランドセル
かざぐるま昨日の風をたがへたる
遠足や父の大きな玉子焼
ふたりして駄菓子をかじる子供の日

岡田ヨシ子
五月号曾孫と俳句競い合う
夏帽子食品カーで会える人
更衣残りの時を畳みけり
何処へ行く宅配便の夏の服

川端大誠
新聞紙空見上げれば暮早し
朝早く買い物に行く雪晴れ間
餅の味きな粉でなくて醤油に
たこ上げる傾くたびに微調整

川端勇健
先生がまどをあければ春の風
手ばなした風船が行く屋根の上
月曜日大雨の中蛙鳴く
夏の海後ろを見れば水しぶき 

川端伸路
風せんを空に上げればかえってきた
サングラスかけてみたけどまぶしいな
れいぞうこあけっぱなしでおこられた
水とうはもれはじめるとこわれるよ
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

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