2023年3月19日日曜日

香天集3月19日 玉記玉、柴田亨、三好広一郎、渡邉美保ほか

香天集3月19日 岡田耕治 選

玉記玉
風車回して風の行きにけり
蝶以前合せ鏡でありしこと
菰巻いて蘇鉄は蘇鉄通しけり
声にせぬ言葉を愛し花辛夷

柴田亨
遠き日をそのままにして石蕗の花
漆黒の故郷のあり蛍烏賊
春休み猫は居場所を決めている
信号の青を連れ立ち春の雨

三好広一郎
ミルク膜情死している花筏
ふむふむと賛成多数桜餅
飛花落花名札の変わる病室に
スライダー東風に食い込む16番

渡邉美保
梅ふふみ刀剣展の刃反る
盆梅の幹の捻ぢれる時空かな
緋桃咲く電車の扉開くたび
蝶の来て座敷牢めくこの書斎

木村博昭
ランナーは前だけを見て菜の花忌
声に出し笑う独りの日永なる
パティシエの大きな帽子花苺
前後みな忘れてしまい囀れり

砂山恵子
トスあげし少女のリボン風光る
梅を見る有刺鉄線二度潜り
朧夜のわたし専用フライパン
ありがとうとかかれたる絵馬あたたかし

安部いろん
三月の雲会えぬこと知っている
先生に指されたように菖蒲の芽
染みのように残る記憶が春愁
隣り合う酒乱が解く春の闇

秋吉正子
堺にも海岸のあり桜貝
春立ちぬ修理の終わるバイオリン
学校の何処にも隅がクローバー
梅の花昨日の数を追い越しぬ

中田淳子
忘れ物取りに戻りし椿かな
微笑をたたえていたり雪椿

北岡昌子
梅の木を植えて一回水をやる
本殿から節分の豆撒きにけり

大里久代
遠くまで菜の花ゆれて遊びけり
幾年を桜咲く道君とゆく
*東京上野にて。

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