香天集4月16日 岡田耕治 選
柴田亨
この国の寂しさを打つ蘆の角
籠りきる私は卵春の雨
さらさらと小さい電車風光る
沈丁花おいてきぼりの恋のこと
渡邉美保
秒針の描く真円春深む
口笛を吹きつつ降りる椿山
春光を返しふくらむ瓦斯タンク
夕映えの空に古巣の高くあり
三好広一郎
入学やいきなりパンツ見られけり
飛花落花明日を掴むものがない
春暁や充電足らぬ人である
見頃期を決められて生く桜かな
久堀博美
さよならは桜並木を標とす
行く春を呼び止めている和歌の浦
春の土涸びし脳をよろこばす
連翹の黄に三人のひみつ隠す
辻井こうめ
ゆるやかに薄絹ほどく桜漬
水際よりホルンの響き花菜かな
山吹の小流れの音恋ひにけり
菱形の口の限界燕の子
木村博昭
前後みな忘れてしまい囀れり
声に出し笑う独りの日永なる
廃線の噂菜の花蝶に化す
パティシエの大きな帽子花苺
釜田きよ子
葱坊主みんな憎めぬ顔をして
消印は当日有効花吹雪
もの言わぬ臓器のしゃべる花明り
わたしには私のリズム囀りぬ
河野宗子
ふるさとの銘菓の形ひなまつり
洗濯機回してまわる春日向
春暁の爪を切る音ひびきけり
老いし腕差し伸べ合えり冷し酒
田中仁美
絆創膏ほほに貼りたり春日向
植木市店主ただ今読書中
チューリップ笑顔の顔を合わせけり
点滴を早めていたり朧月
牧内登志雄
満開もあれば残花も秋津洲
Tシヤツに乳首のありて柿若葉
霾るや空缶潰す背中にも
野に遊ぶ尻ポケツトのスキツトル
川端伸路
すももの花栄養とって満開だ
明るさに見上げてみれば春満月
川端大誠
花の雨小学校にさようなら
川端勇健
春風に乗って大きなホームラン
*岬町小島にて。
0 件のコメント:
コメントを投稿