2023年5月14日日曜日

香天集5月14日 三好つや子、柴田亨、春田真理子ほか

香天集5月14日 岡田耕治 選

三好つや子
桜蘂降る寝違えたような町
生命線は一方通行燕来る
人類を旅する螺旋春の星
父が遺すカレーのレシピ麦の秋

柴田亨
セーラー服白詰草を満たしおり
春ともし大江文学ともにあり
貸衣装不器用に脱ぐチューリップ
母の日の在ることにする茶碗蒸し

春田真理子
不条理の雨に褪せゆく鉄線花
春風に切麻の舞う日なりけり
あたらしき氏神のあり燕子花
遇うために土手の桜を彼方にす

河野宗子
ネモフィラの青を包んで風走る
若葉風わたしの歩み止めてあり
竹の皮脱いだばかりの青さかな
床の間や都忘れの忘れられ

岡田ヨシ子
風薫る延命治療の友の顔
冷蔵庫レンジのメニュー浮かべけり
冷奴つけかけ味噌の店を問う
夏衣デイサービスへ羽織りゆく

川村定子
走り梅雨玄関の戸を少し蹴る
ベランダの山椒いまだ芽を持たず

秋吉正子
旅立や燕が部屋を通り抜け
一つずつ事終わらせて夏に入る

中田淳子
何回もたしかめている一年生
ただいまと言うだけとなりチューリップ

西前照子
新緑やほのかな香しのばせて
早朝の匂いを放つ百合の花

野間禮子
山椒擂り母の匂いを思い出す
目覚しの代わりとしたり田の蛙
*岬町小島にて。

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