香天集5月7日 岡田耕治 選
久堀博美
花明り極楽という橋わたる
春寒の高野に作る死者の位置
囀の谷の深さを響きけり
金鳳花咲けりこの世の曲がり角
宮下揺子
春の土沈黙の中声上げる
爺と爺同じ靴なり竹の秋
海老天を尻尾から食み西東忌
わたくしも男体山と山笑う
楽沙千子
山桜谺競いしことのある
谷水の絶え間なく落つ花明り
桜花満ち足りてゆく人の波
朧の夜勉めることの薄れゆき
垣内孝雄
入学やグリークラブの校歌聴き
買ひ来たる琉金のはや腹を見せ
仕事がら家督を捨てる蟾蜍
「運命」を聴きつ死にたし蝸牛
藪内静枝
春耕や空を見上ぐる力とす
戸締りを確かめ戻る養花天
自転車を選ぶ親子よ風光る
出雲から届くものあり蜆汁
玉置裕俊
ハルカスやきょう一段と黄砂降る
黄砂なり西方浄土から来たる
恋の猫他人の庭を誇り顔
ハンケチを染めていたりし痰ひとつ
牧内登志雄
ゆく春や歌える曲はみな昭和
新妻の購ふ白きカーネーシヨン
長靴を洗ふ井戸端雨蛙
魂を立ていたりし夏の雲
*岬町小島にて。
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