2023年6月11日日曜日

香天集6月11日 三好つや子、浅海紀代子、宮下揺子、春田真理子ほか

香天集6月11日 岡田耕治 選

三好つや子
羊歯若葉髭うっすらと少女かな
昨日から今日へとずれる蝸牛
夏落葉家それぞれに匂いあり
紫蘇もんで第六感を信じる日

浅海紀代子
樟若葉句座のはじめを揺らしけり
溝浚え老人が先ず采配す
白薔薇の白を尽くして散るところ
青空を信じてダリア咲きにけり 

宮下揺子
梅雨寒やもの忘れしを楯とする
当選の和牛黄砂と共に来る
マイナーな気持ちにさせる藤の花
藤棚の中多言語が飛び交いぬ

春田真理子
一片となりても凛と鉄線花
つぎつぎに柱組み上げ夏の空
紫陽花の頭をゆらし思案する
迷い来る蛍が水を点しけり

小崎ひろ子
りんご飴持つ子らが満ち夏祭り
トビウオの海の翼となる五月
燕子花別の権利を行使する
時代劇消して見上げる花水木

牧内登志雄
風鈴の舌に小筆の無季句かな
田草引く農婦の尻の逞しく
提灯の芯切る匂ひ夏祭
ひたと打ち音なく返る夏の波

岡田ヨシ子
燕来る住処作りの声を立て
氷解くデイサービスの復習に
太陽光パネルに田植映りけり
冷蔵庫左右の腕の助け合い

大里久代
二度三度姿を見せる青大将
雨上がり私の庭の七変化

北岡昌子
山中や蛙と鳥のハーモニー
対岸の空港花火揚がりけり

野間禮子
山椒擂りこの香この味独り占め
収穫の喜びうかぶ苗木市

西前照子
何もかも届かなくなる鰻かな
柿の木に願いを込めて消毒す
*岬町小島にて。

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