香天集6月18日 岡田耕治 選
柴田亨
結界をすいと越えいくあめんぼう
悔恨を封書に戻し梅雨に入る
釣鐘草小雨の蜜をもらいけり
地下鉄の傾きに揺れ微香水
三好広一郎
黒に近い赤の瞬間夏の沖
黒南風や両面コピー文字だらけ
鉄棒を苦しめている草いきれ
おない年のようなニオイに立葵
中嶋飛鳥
風少し指先にふれ櫻の実
傷口の小さくなりぬ夏の月
山百合のうつむき加減一歩寄る
朝焼けの袋に透ける捨てるもの
久堀博美
五月蠅いという字に蠅の来て止まる
歯車の噛み合う人といて涼し
ひまわりの顔のもっとも大きな日
優曇華のたのしくなってくる夜明け
木村博昭
みどり児の天衝く動き夏に入る
密約は密約のまま更衣
夏草や黒光りする和牛の背
ここだけはぼくの陣地だ蝸牛
小島守
動線の曲りはじめしなめくじり
夕焼雲ただいまという声のする
空蝉や一直線に並べられ
訴えの続いていたり朝の蚊帳
勝瀬啓衛門
空を見つ卯の花腐し読書かな
大蚯蚓迷い込んだるアスファルト
奔放な薔薇の生垣眠りけり
白鷺や抜き足合わせ頭振る
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