2023年7月23日日曜日

香天集7月23日 玉記玉、谷川すみれ、辻井こうめ、中嶋飛鳥ほか

香天集7月23日 岡田耕治 選

玉記玉
覚醒と惰眠の間蛇の衣
花栗の匂いの混じるそばえかな
甚平と納豆飽きもせず絡む
いとしのバッカス風鈴の舌は鉄

谷川すみれ
蜩や呪文となりし話し声
天の川老老介護終りたる
七夕や姉の背丈を追い越して
早熟の走り抜けたる金木犀

辻井こうめ
捩花の空摑まんと八段目
緑雨して虚しさ超えよオリヅルよ
蝸牛みな虚しさを秘めてをり
雲の峰一本道の遠さかな

中嶋飛鳥
水瓶に半夏の罅の走りたり
◯は愛Xもまた愛行々子
香水のミッドナイトブルー捨てられぬ
遠花火一人二人と失念す

木村博昭
呼び捨ての妻こそ畏(かしこ)立葵
サッカーの少年捷し蜥蜴ほど
守宮出て一部始終を見ておりぬ
曝書してまた青春の中に居る

柏原玄
蛇衣を脱ぐ方丈の大庇
語らいの昨夜よみがえる夕端居
羅の会釈名前の浮かび来ず
ドレミファにそれぞれの色額の花

湯屋ゆうや
くれよんの皮剥き始む緑雨かな
夏休み初めて嘘をついた土手
宵祭アトムの面の目の空ろ
新じゃがを甘辛く炊く給料日

砂山恵子
朝きゆうり回覧板についてゐる
静けさをすべて集めて滝の音
冷房なき車両赤本広げをり
夕焼けをこぼざぬやうに封を切る

楽沙千子
今日のこと持ち越さぬよう髪洗う
赤紫蘇の手慣れていたる塩加減
帯をとり手間を惜しまず梅漬ける
ひと日終う夜の涼しさほしいまま

安部いろん
武士が見た戦場の色夏の月
傷負って泣いていた日は夏の空
草刈の歯に触れたもの見捨ている
外はいまジュラ紀の暑さ貝拾う

古澤かおる
生よりもオクラ鮮やかさっと茹で
初盆に磨く縁側ぬか袋
前を行く日傘レッサーパンダの絵
暗号をほどく科学者蚊遣香

宮崎義雄
雪残る夜明けの町の夜汽車かな
草萌を歩いてゆけり妻籠へ
乗り継ぎの駅で別れるリラの花
こわごわと火口を覗く青嶺かな
*岬町小島にて。

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