2023年7月30日日曜日

香天集7月30日 夏礼子、柏原玄、嶋田静、宮崎義雄ほか

香天集7月30日 岡田耕治 選

夏 礼子
草合歓や田水に雨の匂い濃し
梅雨晴間絵てがみの空ひろくする
潜らずに茅の輪目で追う夕間暮
ふり向けば視野を逸れゆく梅雨の蝶

柏原 玄
万緑に眼鏡を外し文庫本
絶妙に背き合いたりアマリリス
鮒鮓や腕に覚えのある将棋
向日葵の高さ競わず黄を誇る

嶋田 静
山鳩のしきりに鳴きて夏きざす
紫陽花や昨日の夢を見ておりぬ
夏至の日の足念入りに洗いおり
一頭の魚のジャンプ晩夏光

宮崎義雄
朝霧の中に聞こえる蹄かな
夏の雨寒き翡翠のオホーツク
トラックが落として行ける鰯かな
皿音の止まぬ夜更けの夏暖簾

前藤宏子
かさぶたの剥れそうなり合歓の花
昨年と同じ捩れに捩花
新入の金魚をつつく金魚かな
妹の倍生きている夕端居

松並美根子
過ぎてから気づく伝言百日紅
万緑に洗われてあり六地蔵
御神燈点せる音や夏の宵
蟬の声八十路の坂を前にして

丸岡裕子
白桔梗心と性の差し違え
梅雨の月つかの間の夜を恋しがり
大雷雨心の闇を巻き込んで
百日紅越してきた日の若きこと

金重峯子
ひまわりに元気をあげることのあり
老いる事受け入れており夏の空
水無月や掃除当番恙無く
ケッケッケ親呼ぶ雉子の夕暮れる

森本知美
青山椒待つ人逝きし坂遠し
月見草貨物列車の止まる駅
看板と雲を映せる植田かな
七夕の雨に残りしアイス買う

木南明子
初蝉の朝日待ちかね鳴いている
ワッショイと天とどろかす夏祭
ぐずぐずと雨遅々として蝉鳴けず
太っちょの子供の走る汗しとど

目 美規子
久久に守宮身じろぐ厨窓
旅立ちの淋しい知らせ半夏生
故郷は母がふるさと雲の峰
正直に生きて夏空澄みわたる

安田康子
この世には未練残さぬ蝸牛
蝉しぐれ休止符のなき二重奏
今朝の秋こむら返りの予感あり
晴れ女どしゃぶりに遭う厄日かな

勝瀬啓衛門
色褪せた紫陽花照らす雲間から
星空や蛍の姿昨日まで
蛍火を探し遥かに北斗星
母の手に玉葱一つ青果店
*岬町小島にて。

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