香天集7月9日 岡田耕治 選
三好つや子
鉛筆で好きと百回さくらんぼ
薔薇香水きのうと違う耳の位置
天の川貿易会社の古切手
空蝉を全うするや脚の先
久堀博美
隙を見て逃げ出す猫や夏祓
肌脱の肩に残りし紐の跡
なめくじの愉しくなってくる予感
花茣蓙や眠くない子も眠い子も
宮下揺子
初夏の大型ビジョン波立ちぬ
籐椅子に怒ったままの寝顔かな
青空や悼むかたちに蓮閉じる
空席は風の予約か葭障子
春田真理子
戦場に落ちてつもりし沙羅の花
一日を讃えてをりぬ大夕焼
かたくなに夏大根をおろしおり
戻れぬであろうと想ふ虹の橋
小崎ひろ子
営巣の燕イカロスにはなるな
脳ドリル夏の思考を白紙にす
冷房や吊り広告を揺さ振れる
自販機に汗だくの子ら五、六人
垣内孝雄
店頭にサバの丸焼き半夏生
萍や浄土を願ふ人の群
孑孑や忙しき世となりにけり
物干に妻と娘のあつぱつぱ
牧内登志雄
母さんは何してますか盆の風
夏の雲転がす牧草ロールかな
親指を立てて割りたる青林檎
パリー祭煙る屋台の三色旗
岡田ヨシ子
白靴や下宿へ移る娘さん
梅干とかしわを揉んで一品に
従姉妹との通話の長し水中花
石に坐し語ることあり片かげり
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