香天集7月2日 岡田耕治 選
玉記玉
連ねゆく文字津津と蟻となる
まっくろな滝と真昼が落ちて来る
濁流を掴んで来たり黒揚羽
紙魚ぽっとぽっと行方の定まらぬ
森谷一成
大勢といつも離れる青時雨
ラーメンの鼻の行列衣替え
悪党の腕にとまれ天道虫
行行子掛け合いの声頻るなり
辻井こうめ
山蟻の斥候となる速さかな
走り過ぐオーデコロンのをのこたち
青葉木菟腓返りのカオスかな
古着着て古着を売れり心太
浅海紀代子
低き軒通り若布を干しにけり
日差しから置いてきぼりの朝寝かな
豆ごはんいつかの夕べよみがえり
頬杖を解くことにする五月雨
佐藤俊
知らぬ顔街に溢れて油照
蛇の眼燃え人は密かに歳をとる
薄味に慣れて世の中暮れていく
ひとはみないなくなるもの天の川
加地弘子
鮮明に生まれ変わりし紫陽花よ
闇を抜け火照りはじめし梅雨の月
老鶯やここよりは墓真っ直ぐに
滴りに変形したる柄杓かな
古澤かおる
母の干す父の匂いの夏蒲団
著莪の花介護施設を決めかねる
バスケットボールのシューズメロン切る
天才はオムレツが好き立葵
安部いろん
仙人掌の花ほんとうの恋はなく
安息を求めて夏の始発駅
本能と男が残す草いきれ
いつからか私地を腹這うかたつむり
吉丸房江
梅仕事片付け旅に出ておりぬ
「出来ました」初ものの茄子仏前に
万緑の木漏れ日浴びていたりけり
何事も人に告げおく梅雨晴間
川端伸路
制服についてくるのはかたつむり
虫食いはちょっと苦いなミニトマト
もろこしのカリカリカリと止まらない
川端大誠
五月雨の音だけ聞こえ帰り道
ひんやりと口で弾けるミニトマト
川端勇健
似ているなトマトのヘタと今日の星
トマト味大好物のオムライス
*岬町小島にて。
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