2023年9月17日日曜日

香天集9月17日 三好広一郎、柴田亨、木村博昭、久堀博美ほか

香天集9月17日 岡田耕治 選

三好広一郎
ひとりより一人を誘う夜の秋
秋の詩に奪われ消える途中かな
落ち葉踏むきれいな音も病んでいる
一曲を分け合っている赤蜻蛉

柴田亨
祖父の手よごつごつとして柔らかき
星月夜街は病に沈みいる
向こうから帰ってきたとビール汲む
九月来る献杯のあと乾杯し

木村博昭
ゆく夏の漂着したる簡体字
かなかなや納屋に錆びたる肥後守
声を出しひとりで笑う鰯雲
蜻蛉の交尾のかたち平和なり

久堀博美
地底より海の高くて裸の子
ひとときは五感を休め髪洗う
秋探す太平洋の傾きに
刻々と秋に近づく機上人

釜田きよ子
目薬の苦味残れる夏の果
朝ご飯しっかり食べて昼寝する
赤とんぼ群れて一村静かなり
百日の子にある意思よ雲の峰

宮下揺子
かき氷天辺よける婆二人
針と糸持たない女震災忌
芭蕉布の張りを楽しむ鎖骨かな
子守歌自分に歌う熱帯夜

神谷曜子
玄関に光る金亀子の行き倒れ
素足にて踊れば床の呟きぬ
冷房の只今母は脳ドリル
紅茶店の女主に翳る夏

岡田ヨシ子
誕生日へ指折っている九月かな
小鳥くるスマートフォンの学び好き
フライパン重くなりゆく秋茄子
月光や破れ障子に消されたる
堺市にて。

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