香天集11月12日 岡田耕治 選
三好つや子
山水図の余白にきえた秋の蛇
鳥渡るシャッター街の万国旗
菊日和このあとドラマ急展開
小春日の公園という玉手箱
加地弘子(10月)
車前草の溢れていたる山羊の乳
子ら去にて遊びの続く猫じゃらし
幾たびも吾の歳聞く猫じゃらし
恙無く住んでいるはず竹の春
久堀博美
若者は余所より借りる村祭
木の椅子に体を預け小春凪
堆く安らいでいる落葉たち
大根煮る音に短編集開く
加地弘子(11月)
懸命に動いておれば小鳥来る
狗尾草光の揺れる目眩かな
Tシャツが坂を下り来る十一月
綿虫のやわらかに来る命かな
砂山恵子
映画見しステップを踏み枯木道
大根をわが子のやうに洗いけり
行つたきり帰つてこなき小春の子
ゆうるりと開く扉や神の留守
春田真理子
竹ざるの中に風受く花野かな
伐株に散る切麻や秋入梅
藷蔓を手繰り無心となりゆけり
秋の空ながぐつを履き鉄棒に
川村定子
薄雲の一朶も寄せず月明り
秋あかね指の先から飛んでゆき
栗ご飯湯気が笑顔を連れてくる
鰭酒や父親に似る口を継ぎ
勝瀬啓衛門
野を征す鵙の高音や勝ち名乗り
撓る枝四角四面の次郎柿
眠り入る黄ばむ草木零落す
くだら野やはぐれ蕎麦生る畑跡
*京都大学にて。
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