香天集11月19日 岡田耕治 選
渡邉美保
深淵をのぞく紫式部の実
次の波待つてゐる岩鯊日和
どんぐりを拾ふ競争今日も負け
覚えなき血豆がひとつ秋の昼
釜田きよ子
字を忘れ人を忘れて神の留守
ロボットも働き勤労感謝の日
破蓮や煙の匂いする男
大根煮る時間たっぷりある真昼
三好広一郎
去勢の濡れた弾力赤海鼠
鎌鼬やめて髭剃っている途中
私をひいて一人の夜長かな
秋蝶や水平線に脚とられ
柴田亨
つぼみ数多真白に散りし山茶花よ
秋の日の葉叢を揺らし透き通る
冬隣テレビニュースは閉じておく
凩にまだ生きている靴を履く
楽沙千子
頭頂に微熱のありて葛湯飲む
輪郭のはっきりとして秋の蝶
オハヨーと走り去る娘の野路菊よ
金木犀言葉かけ合い擦違う
秋吉正子
新蕎麦を求め片道一車線
無人なる通過列車の風寒し
張り替える息子の部屋の障子かな
送料を高いと思う鰯雲
中田淳子
関東炊古き暖簾をくぐりけり
木の葉舞う同じ時刻の小道かな
いち早くひそんでいたりクロッカス
*東吉野「天好園」にて。
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