2023年11月26日日曜日

香天集11月26日 夏礼子、中嶋飛鳥、柏原玄、湯屋ゆうや他

香天集11月26日 岡田耕治 選

夏 礼子
てのひらに銀杏黄葉の便り受く
秋澄むや組体操の名は地球
錦木の人恋う色に染まりけり
ほろ酔いの座五は迷わぬ十三夜

中嶋飛鳥
鵙日和前ばかり見て一万歩
秋風通う善の顔悪の顔
たなごころ秋思閉じおり零しおり
モニターの波形の無音秋深む
 
柏原 玄
おしゃべりの不意なる途切れ木の実降る
銀杏黄葉この頃変わる男振り
雁渡る八聯隊の負け続け
丁寧に生きているなり後の月

湯屋ゆうや
ストーブの遠い席から埋まりたる
深き夜のコンクリートへ椿の実
虫食いの穴を縁取る霜の白
後の月皮膚のきわまで満ちるもの

神谷曜子
秋入日屋根屋の音の残りたる
木犀花友の忌日と気付きけり
行き当たりばったりになり秋の蝶
谷村新司にコスモスの花束を

安部いろん
北颪争いに訳なきことも
余りある緊張のまま懐手
笑むことを迷える受信虎落笛
寒昴死のみ外せぬ取り合わせ

古澤かおる
初冬の日の差す峠道祖神
冬日背中に我ら皆好好爺
家々の匂い家々の寒灯
飯店の唐子人形着ぶくれて

宮崎義雄
幼子の眠る屋台の林檎箱
居酒屋の丼鉢の海鼠かな
暮早し屋台五軒の赤提灯
二合半(こなから)で止めると決めし寝酒かな

嶋田 静
いつまでもかごに盛られし青蜜柑
曼珠沙華ポキポキ折って少女来る
ポケットにいつもどんぐりかくれんぼ
コスモスの強さどこから誕生す

前藤宏子
チョコレート四角にひらき秋惜しむ
雲一つ無し晩秋の一万歩
米袋ひらき新米見せる主
身を捩る芋虫突く大鴉

森本知美
烏瓜にしわの深まり墓の道
秋深む享年十九兵の墓
足元のかえで紅葉を栞とす
飲みし湯の腹にしみゆく秋の朝

丸岡裕子
おでん屋の小さきのれんざわつきぬ
太りゆく月や泣いたり笑ったり
紅葉降る小柄な父の肩を恋う
会えぬ間に姉は喜寿なり菊日和

木南明子
コスモスの赤でありたい日差し受く
秋雷や今日一日をどう生きる
煌煌と我らに注ぐ十三夜
休診の整骨院よ冬の雨

目 美規子
無造作に活けられてあり冬の薔薇
湯豆腐や心あらずの生返事
シュトーレンをジノリカップでカプチーノ
立冬のアロエもぎたてスムージー

安田康子
ひと雨の冬の気配の憂鬱や
この齢で秘密なぞ無し文化の日
大根切るおいしい予感信じつつ
まだ生きる三年手帳秋深む

松並美根子
コスモスの波に乗り酔いひとりじめ
装いの仕草可憐に七五三
秋の夜や万葉の詩にうっとりと
紅葉坂友を偲んで若づくり

金重峯子
出し切れぬ愚痴の一つを露と消す
コスモスのはしゃぐ会話を盗み聞く
コスモスを溢れるほどに活け真昼
秋うらら並ぶマニキュア出番待つ
*岬町小島にて。

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