2023年12月3日日曜日

香天集12月3日 森谷一成、谷川すみれ、辻井こうめ、木村博昭ほか

香天集12月3日 岡田耕治 選

森谷一成
うそ寒の釣銭つかみ馳せゆけり
雪隠の光つらぬき塵おどる
傘骨を打上げてゆく初しぐれ
官邸へかぼちゃを納め開戦日

谷川すみれ
疲れないほどの明るさ石蕗の花
とつとつと大きな窓の木の葉降る
思春期の設計図なり万華鏡
立冬の動けば動く鯉の群れ

辻井こうめ
空っぽとなりし家中秋の声
秋気澄むコロボックルの国嘗て
ましぐらにマリーゴールド黄の愁ひ
控え目に吠ゆる番犬石蕗の花

木村博昭
何処より添水の聞こゆ手合い前
掌を悦ばせたる林檎かな
抱えられ蹴られラグビーボールかな
冬晴や糸を通さぬ針の穴

久堀博美
飲むほどの事でもなくて風邪薬
コスモスにかどわかされし女かな
色鳥来水面がふわと傾きぬ
踏み惑う夢の中まで花野かな

佐藤俊
冬ぬくしひと言多き神のいて
地球儀をぐるぐる回し拗ねてみる
冬晴の小悪人の背透けて行く
おそろしや猫も地球も風邪をひく

河野宗子
飛び回る落葉追いかけ来たる客
娘からのスリーマー着て友と会う
帰り花わたしではない厚化粧
先生の殺陣の振る舞い秋を切る

田中仁美
矯正のワイヤー軋む冬の朝
八十路なお落語を演じ秋日和
ミッキーのカチューシャ被り冬銀河
不整脈はじまっている夜寒かな

垣内孝雄
蝦蟇口の小銭を増やし年の市
灯台に白きポストや小六月
返り花かれこれ十年君と僕
手を引かる昼の鳴滝大根焚

吉丸房江
運動会なぜか涙の流れけり
二度三度火元確かむ紅葉かな
卒寿なる同窓会の冬帽子
戦争の根を断ち給え熱田宮

牧内登志雄
鰰のほふと崩るる炭火かな
ひと筋の涙のとかす別れ雪
冬ざくらひとひら落とすうなぢかな
軽四輪山と白菜積まれけり
*ホテルアウィーナ大坂にて。

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