2023年12月10日日曜日

香天集12月10日 玉記玉、三好つや子、岡田ヨシ子ほか

香天集12月10日 岡田耕治 選

玉記玉(12月)
寒雀この世の石に触れに来る
黒馬を日差が跨ぐ十二月
漏刻即ちひとすじの月光
ポインセチアの芯よ黄昏の街よ

三好つや子
さっきまで月光だったカトラリー
綿虫のそれはしずかな母音かな
眠らない街の匂いよポインセチア
画数のどこか足りない冬の蝿

玉記玉(11月)
放課後の花梨捥がれている私
ハイヒールの音が氷柱となってゆく
エクレアの旨寝をしたる臘八会
青銅器の底紀元前の寒泉

岡田ヨシ子
病院のコートファッション楽しみぬ
冬空へ誘われているノックかな
コーヒーを飲む古民家の小春日に
鉛筆やかじかみし手を走らせる

大里久代
紅葉の話から入る同窓会
周年の航空写真秋の空
秋の風私の頬を撫でていく
ご機嫌な友から便り秋の宵

西前照子
秋祭笛太鼓聞く涙かな
雨合羽引く手の重き宵祭
金木犀匂う方へと姿追う
長生の童子に変わる運動会

野間禮子
朝露の道長くなるランドセル
萩のもと飯盒飯の美味いこと
後の月老いて語らう友のあり
一歩二歩飯盛山の御来光

勝瀬啓衛門
眠る山寝息は風の音ばかり
冬北斗柄を傾けて星降らす
冬ぬくし暫くカフェの止まり木に
しんなりと干大根の細い脚

川端伸路
十五夜のこの輝きをわすれない
栗ごはんだけを食べても美味しいよ
鈴虫は鳴き始めると終わらない
帰ったらこたつに入ってゆっくりと

川端大誠
グランドの落葉集める木とんぼ

川端勇健
銀杏散る間に見える日ざしかな
*米子市にて。

0 件のコメント:

コメントを投稿