香天集4月14日 岡田耕治 選
玉記玉
飛石にまれびととなる養花天
糸桜ふわりと裏の見えにけり
複雑を易しく語る諸葛菜
鶏とはち合わせたる労働歌
三好つや子
まれびとをもてなす童鼓草
黄砂降る古代文字めく人の影
山葵沢りんりんりりり水走る
組織には馴じめぬマイマイツブリかな
柴田亨
水琴窟大地の静寂満ちており
雨の世の物の怪集う紫木蓮
彼岸西風何もないこと母のこと
山茶花の散り果て天を広くする
加地弘子
揚げ雲雀策略通り揚がりけり
輪っか振る度に飛び出す石鹸玉
艶っぽく蒸し上がりたる春キャベツ
絨毯になりて安寧花ミモザ
春田真理子
教え子を見届け逝けり涅槃雪
連翹や玄関に鳴る土の鈴
あつまりぬ朧の夜の楽器たち
春の雨支える傘のあゆみかな
古澤かおる
絡みつつ紅を帯びたる茨の芽
肉球の黒い斑点春きざす
高齢は歩け歩けと風光る
クルトンをスープに浮かべ春の旅
上田真美
めばる目で往生させてと我に請う
菜の花を感じていたりオムライス
ゼラニウム囲む雑草それも好き
春霖や次第に草の濃く香り
岡田ヨシ子
菜の花を三本貰い散歩する
桜狩テレビの中を何処までも
散る桜シルバーカーが巻き込みぬ
鯉のぼりいつまで生きる早さかな
北岡昌子
山間やうぐいすに耳かたむける
静寂の雪降りそそぐ高野山
朽ち果てた木なり桜の花が咲く
大里久代
見守りし子ら卒業のたくましさ
予報士が何回も見る初桜
吹く風に香りを運びフリージア
〈選後随想〉耕治
組織には馴じめぬマイマイツブリかな 三好つや子
マイマイツブリはかたつむりの別名で、殻を背負って単独で自由に移動しているように見える。一方、組織は、多くの個人が集まって構成されるものであり、自由よりも集団の規範が重視される。マイマイツブリは、漢字で「舞舞螺」と書くが、組織の中できりきり舞いしていたけれども、それを抜け出そうとする気配が感じられる。規範がなければ組織は成り立たないが、個人にとっては組織に所属することがストレスになる。そのストレスから抜け出そうとするマイマイツブリの姿に共感する。つや子さんが捉えたこのマイマイツブリは、果たして上手く組織を抜け出すことができただろうか。
*岬町小島にて。
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