2025年7月20日日曜日

香天集7月20日 三好広一郎、柴田亨、木村博昭、砂山恵子ほか

香天集7月20日 岡田耕治 選

三好広一郎
鉛筆は立ったり寝たり梅雨晴間
炎昼や空気のような塩で生き
八月や紙人形のような人
蛇と蝉濡れた透明な時間

柴田亨
駆け抜ける蜥蜴に虹の切れっぱし
ほっとしてやがて淋しき祖父の百合
ベトナムの友の折り鶴星祭り
この林老鶯のあり統べており

木村博昭
ふところに身代り地蔵青嵐
潰されしペットボトルの旱梅雨
大阪の地下街をゆく金魚玉
大いなる女の尻や田水沸く

砂山恵子
路地胡瓜あれは若さの手前の香
トマト赤し厨の空気動き出す
空蝉にそつと触れるとまだぬくし
ひようひようと倒れし親父水鉄砲

平木桂子
短夜や夢の意味問ふ夢の中
病院の夜に戻れる蝉の声
父母を練り込んでゆくはつたい粉
十薬やクルスを捧ぐ殉教者

上田真美
ビヤホール今宵は空に溶けましょう
七夕のいまだ逢瀬を願いけり
貝拾い旅の話を聞いてみる
色が好きアガパンサスの響きも好き

楽沙千子
アイロンの余熱を使い梅雨湿り
灯火に狂う火蛾来ぬサッシ窓
性格を出して親しくなる端居
日焼子のかけ出して行くチャイムかな

〈選後随想〉 耕治
鉛筆は立ったり寝たり梅雨晴間 広一郎
 先日の大阪句会で話題になった句。久保さんが「鉛筆は作者だろう」と鑑賞した。私は、書き物するときに鉛筆を立てたり、でも疲れたら寝かしたりという風な、鉛筆そのものが立ったり寝たりしているという、まずその情景を思い浮かべた。そこから更に、その鉛筆が作者だというふうに踏み込んでいくと、梅雨にたまたま訪れた晴れの日、立ったり寝したりしている姿、悶々としながら書き物をしている、情景が浮かんでくる。そのことが皆さんの共感を呼んだにちがいない。広一郎さんが、立ったり寝たりしながら「香天」連載の俳句ショートショートを書いている姿を想像すると、たのしい。
*東京都千代田区にて。

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