香天集9月25日 岡田耕治 選
谷川すみれ
何もかも出しつくしたり蓮の骨
寒風の国旗全員揃いたる
円心に寄り添ってくる冬の鯉
日本の好きなところに鴨眠る
加地弘子
虫貰い眠れぬ夜となりにけり
はっとするものと一緒に小鳥来る
終のことひとつとなりし烏瓜
空に群れ海に群れゆく鰯雲
澤本祐子
風鈴に風躍りくる夕べかな
一粒にしずまる露に空のあり
葉鶏頭とぼしくなりし色のあり
ちちろ虫靴から靴へ跳びゆけり
橋爪隆子
秋の蚊を捕えしはずの掌よ
逆転のヒント吸い込む鰯雲
ロッカーを空ける別れや秋日影
一日を素顔で通し酔芙蓉
藤川美佐子
雨蛙喉から化身していたる
ペディキュアを開いて閉じて夏休
甚平や剃り跡青く帰りくる
一本のカンナの色の不思議かな
坂原 梢
台風の休校となる声跳ねる
一回り大きくなりし菊人形
虫の音に般若心経重ねけり
秋の日を包んでいたり観覧車
立花カズ子
ザリガニを川へ帰して夏終る
我が杖の歩み行く音秋はじめ
露草の藍につながる故郷かな
灯り消す部屋を満たして望の月
村上青女
青空の色深くして台風過
涼新たコーヒー香る卓にいて
供花の束船より放ち秋彼岸
秋の雨遺影頬笑む別れかな
中辻武男
蜻蛉がよぎり続けて老の影
新涼や宵の横笛近づきて
親しみし水面に触れて秋燕
十五夜の月浴びている余生かな
戸田さとえ
青空の見えて明るき敗戦日
夕厨前をさまよう鬼やんま
平和の灯消える事なく蝉時雨
先の事思えば集い赤蜻蛉
*昨日行った「香天」上六句会の会場のホテルを飾った花。
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