薬箱 岡田耕治
冬に入る富山の赤い薬箱
立冬のスーツケースを鳴らし閉ず
冬の空遠くから来て帰りけり
紅茶から始まる冬の物語
何もかも自転車を漕ぐ息白し
目を合わす梟の首止まりては
猫の声で呼ばれていたる障子かな
初時雨動物園を渡りけり
聴くための目をつむりたる初時雨
新しい名前で呼ばれ竈猫
よく転ぶ人と歩きて冬ぬくし
行き付けの書店失い日短し
湯に入りて米焼酎の対流す
一切れの最後の鰤が光りけり
よきことに意識を向ける寝酒かな
*京都、糺の森。
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