2017年1月29日日曜日

香天集1月29日 石井冴、中嶋飛鳥、澤本祐子ほか

香天集1月29日 岡田耕治選

石井 冴
春隣朝を開いてゆく瓦
門前をソースの匂う報恩講
綿虫とみんな力を抜いてみな
内からの音を宿して寒卵

中嶋飛鳥
大縄のしなりては打つ地の寒気
春待つや瓦煎餅バリと噛み
春を待つ旗の形を顔に貼り
待春のデータファイルを提出す

澤本祐子
冬の雲検査の前に視ていたる
買い物のカートが走り虎落笛
福鍋や一日だけの大家族
新しきエプロンをつけ春着とす

加地弘子
給湯器突然故障して大寒
雪はげし子の車のみ遅れけり
寒禽の長き嘴一直線
北窓開く生まれて間なき声を聞き

中濱信子
厨にも神御座します年用意
元旦や蛇口に水のほとばしる
初夢や歳とらぬ世に来ていたり
七草粥子等の頬っぺの桃色に

北川柊斗
すべり良きカーテンレール初景色
初明り頭首胴体四肢ありて
福笹を手渡す巫女の薄化粧
凍蝶よ君とシリウスまでの距離

木村博昭
若水やいつものとおり嗽する
松過ぎの人形浄瑠璃戎舞
急峻の水仙どれも海を向き
享年の高きを褒めて寒見舞

永田 文
若葉摘日向の匂い持ち帰る
寿ぎて赤い糸より縫い始む
猫よりも猫になりたる昼炬燵
風音の止んでゆく闇雪積もる

羽畑貫治
北方の四島遥か冬の星
高齢の鴨を残して帰りけり
しんしんとただしんしんと雪女郎
スカートを少し縮めて日脚伸ぶ

安部礼子
鬼笑う間もなく除夜の鐘を聞く
手袋をするかスマートフォンするか
帰り花一目惚れかもしれぬ夢
タイトルを直すノートの初日記

西嶋豊子
猫にくる医師の賀状を読み聞かす
この寒さ人も通らず犬も見ず
木枯や逢いたき人の居る場所へ
風邪引きの粥をすすりて一人の日

*大阪市内釜ヶ崎にある「釜ヶ崎芸術大学」。

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