香天集７月９日 中村静子、宮下揺子、釜田きよ子、羽畑貫治

香天集７月９日　岡田耕治　選

中村静子
日輪のはじめに当たり揚雲雀
朴の花傷み出したる宙匂う
透けるまで伸びきっているなめくじり
草笛のなかなか鳴らず匂いけり
宮下揺子
スモークツリー胸中に埋まる棘
一列になり廃校の藤を見る
刈りあげし髪不ぞろいに半夏生
引きずって七夕竹をもらい来る
釜田きよ子
綠雨中吸物に出汁効いている
ほーたるの匂い人間生臭し
かたつむりゆっくり過去にさかのぼる
紫陽花に雨つぶ嬉々と入りけり
羽畑貫治
コンクリートの割れ目から出て月見草
朝焼に両掌を合わせ声を出す
磯桶に並んでいたり海女の笛
父母眠る墓地へと続き盆の月