〈俳句物語〉 岡田耕治
バーナードリーチの皿よ葛桜 長谷川洋子
主)今日はわざわざ来てくれてありがとう。雨、大丈夫だった?
客)はい、電車に乗ってるときは降ってましたけど、駅からここまで傘は入りませんでした。
主)それはよかった。ポットのお湯で略式だけれど、お茶を点てるわね。まずは、お菓子をどうぞ。
客)わあ、これは何と言うお菓子ですか。透き通っていて、桜色…!
主)葛桜(くずざくら)というの。葛の根を砕いて絞ったデンプンから作られた、半透明の葛生地。その中にこし餡を包み、塩漬けの桜の葉を巻いた和菓子よ。
客)初めていただきます。それに、このお皿。ぽってりとした厚みがあって、なんだか土の温もりを感じます。
主)それはバーナード・リーチというイギリスの陶芸家のお皿なの。私、先月まで入院してたでしょ。退院してから、食器棚を整理していて、今日のために出しておいたの。
客)このお皿と和菓子の組み合わせ、歓迎されているみたいです。切れ目を入れるのがもったいないほど。わあ、上品な甘さですね。
主)では、お茶もどうぞ。
客)お点前(てまえ)頂戴いたします。
主)よかったら、このお皿、ペアで貰ってくれるかしら。
客)え、いいんですか。
主)このお皿は、よく使い込んだ方がより美しくなると思うの。私は、残り時間のカウントダウンに入っているけど、あなたはこれからでしょう。
客)ペアで! 今付き合ってる彼とこのお皿を使いながら、新しい日々を重ねなさい、そんなメッセージですね。では、心していただきます。