渡邉美保
コップからまつすぐ伸びて葱の青
真つ新の靴真つ新の霜柱
触角を束ねま白き霜柱
梅ふふむ鳩も幼児も地を歩み
三好つや子
饅頭に酒の香つんと女正月
ちょい悪のみかん寒波が連れて来る
冬木立からだに太古の水の音
魂の発酵を待ち日向ぼこ
中濱信子
余生には余生の暮らしちゃんちゃんこ
白菜をさいて昔を近くする
ファスナーの一度で上がる初句会
海鼠切る瀬戸内の潮噴き出でし
浅海紀代子
流れくる軍艦マーチ冬ざるる
人の日の猫とことばを交しおり
冬の蠅日向探しているところ
日脚伸ぶ一人と猫と縁側と
宮下揺子
あっけなく診察終わり春兆す
シクラメン喫煙室に閉ざされて
寒牡丹双子のような老夫婦
国道の起終点標識（ゼロキロポスト）雪が降る
辻井こうめ
福袋のわらしべ長者読み始む
日脚伸ぶ周回遅れあと一周
去年今年境を流ること多し
初旅の観世音とも上京す
大杉 衛
冬帽子品川駅で見たことも
抽象の裏側を行く寒念仏
横向きの鯨のかたち切り抜けり
水銀の重さと思う雪催い
中濱信子（１２月）
一病をさずかり秋刀魚焼いており
小春日やベンチの影の小さくなる
霜柱踏んでは老いる齢かな
冬の池鯉の気配の一つあり
浅海紀代子（１２月）
冬灯ここで手紙をよく書きし
ペットボトルペコペコ潰す十二月
階段を上がり下りして年つまる
気疲れの息吐いており水仙花
羽畑貫治
冬の雨降り込められている話
寒鮒や上目使いに探りくる
高潮と遊ぶ流木春岬
毎日が新しくなる春日影
安部礼子
冬のせて川どこまでも逃亡す
寒の月真白き糸を福音に
テールランプの赤が集まり寒き夜
初詣原風景の色を探す
村上青女
冬凪や数多の漁船展がりぬ
島々や日向ぼっこの凪となり
山の端の残月白き師走かな
冬に発つ平和賞受く沖縄に
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