2018年9月20日木曜日

三鬼忌の明けて朝なるバーにゐる 岡田一美


三鬼忌の明けて朝なるバーにゐる 岡田一美
 句集『記憶における沼とその他の在処』青磁社。かつて石田波郷が西東三鬼に人生の相談を持ちかけたとき、三鬼は「そんなことはどうでもいい。俳人は、俳句が全てだよ」と応えたと六林男師から聞いたことがあります。六林男師は、「今夜もいい俳句が書けるように、一所懸命飲もうかい」と、朝まで開いている店で杯を傾けました。そんなエピソードが浮かぶ一句です。忌日の句はよく見ますが、それが明けるという書き方は、初めてです。三鬼さんや六林男師のように、現世のことを隔てて、いい俳句を書くために飲み続け、朝なるバーにいる作者。俳句を書くための時間を最優先した成果が、この一巻に息づいています。
*岬町小島にて。

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