香天集9月23日 岡田耕治 選
三好広一郎
銀杏を年上と思う匂いかな
眼を瞑り百引く七よ父の秋
ラジオ体操朝顔に会いにいく
自らの水に浮かんで冷奴
谷川すみれ
ひとつ進めばおのずから寒椿
北風を愉しむメタセコイアかな
寒鴉見えなくなるに鳴きつづけ
鴨入りて水中もまた光なる
橋爪隆子
女二人まずビールからはじまりぬ
百日紅先へ先へと散れば咲き
秋暑しあいさつの語尾気にかかり
我が家や台風通る右にあり
木村博昭
大阪の喧噪に居て雲は秋
飛行機の旅より戻り秋刀魚焼く
旅のこと一言添えて黒葡萄
白桃や十五・十六・十七歳
古澤かおる
三日目を秋の庭師は考える
年長の庭師の胸や赤い羽根
リモコンの電池を換えて秋灯
赤蜻蛉追いかけてゆく背番号
立花カズ子
風鈴や添い寝の妣のうすうすと
夕顔の匂いたちけり川に沿い
鶏頭の赤々と葉の鮮やかに
夕風のやさしく白の曼珠沙華
中辻武男
山裾へ連なる蕎麦菜花盛り
まほろばを野分来ぬまに刈る農夫
やりまわし平成しまう秋祭
住み馴れし水面を飛んで秋燕
村上青女
つゆ草の青凛として嵐去る
訪れし厨の窓よ秋の風
この朝のやっと見つけしうろこ雲
隣家よりピアノレッスン秋の雨
*大阪城にて。
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