2019年6月30日日曜日

香天集6月30日 玉記玉、釜田きよ子、中濱信子、浅海紀代子ほか

香天集6月30日 岡田耕治 選

玉記玉
みずみずしいね白靴のかすり傷
青梅に触れたか君は新婚か
父の日の父青竹の使者である
蜥蜴走る私をちょっと動かして

釜田きよ子
白薔薇水ことごとく弾きけり
少しづつ色を違える植田かな
完熟のトマトの赤の完璧に
目に見えぬ手がほうたるを捕えけり

中濱信子
夏燕一直線に伸びてくる
遠のいて見つめ泰山木の花
代田千枚ひとつひとつが空貰う
走り梅雨夜は鉄路を近くする

浅海紀代子
脱走の猫の爪痕梅雨に入る
隣の児猫と転がる夏座敷
ほととぎす佳き人の住む森辺り
一日の汗を回して洗濯機

北川柊斗
赤ワインゆるりとそそぎ冷奴
テキーラに見ひらく眼明け易し
熱帯夜赤きルージュとジンライム
月涼し舌にころがすブランデー

古澤かおる
南風に樹形を晒し大ケヤキ
空梅雨のぽろぽろ零す粟おこし
何ひとつ掴むことなし夏の尾根
満潮の汽水に力青水無月

安部礼子
滝しぶき無限刹那の中にいる
本心をくらましており日雷
大蜈蚣嘘つきになり夜を這う
首塚に訪れている黄金虫

中嶋紀代子
ジーンズの膝が傷つき夏きざす
開幕の曲が流れて夏燕
髪切りて日傘持つ手の軽くなり
小判草摘み権兵衛に逢いにゆく

櫻淵陽子
梅雨に入るチョークの折れたその字から
六月の退屈な雨止みにけり
人の居る気配はなくて雨蛙
熱帯魚大きな泡にぶつかって


*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。

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