三好つや子
着ぐるみの煙草の匂い鱗雲
定まらぬ青のそこここ九月過ぐ
秋深む大団円のない童話
草紅葉五年二組の詩文集
砂山恵子
しんにようのはねの長さの秋思かな
帰らぬ時帰らぬでよし林檎の香
飲む量を決めたる夜の新酒かな
風さやかさよならと言ふボランティア
橋爪隆子
秋日傘木洩れ日の熱折りたたむ
電車発つ音を拾いて秋桜
新涼のひとりに長きベンチかな
ていねいな口づけのごと葡萄吸う
澤本祐子
緑蔭の木洩れ日映る蛇口かな
塩薄し一夜干しなる開き鯵
新涼や葉書三枚投函す
レシートに一句書き留め赤とんぼ
神谷曜子
みつからぬ眼鏡の行方大花野
わがままな国に爆ぜたる鳳仙花
釣船草生まれ変わりは望まない
紫苑咲く水族館の淡水魚
岡田ヨシ子
白髪の米寿を祝う今年米
モロヘイヤ終りを知らす花のあり
寝転がるほどに秋雲変わりゆく
秋刀魚焼く香を噴き出して換気扇
*四天王寺にて。
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