鷺の巣や東西南北さびしきか 寺田京子
鈴木六林男師に「ヒロシマや西に六日の陽を送り」という句があります。この句の場合、ヒロシマが目の前にあるのではなく、八月六日、西に夕日を送ることによって、かつて訪れた広島を想起するという仕立てです。同じように寺田京子さんは、断崖にあって東西南北からの風雨にさらされている鷺の巣を想起することによって、この身の寂しさを鎮めようとしているにちがいありません。病みつつも俳句に真摯に向き合った寺田京子さんの句業の全貌が、この手のひらに届いたことを心強く思います。御出版の労をとられた皆さまに感謝します。
*岐阜県にて。
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