2021年6月30日水曜日

白南風が開く頁  岡田耕治

改造社版歳時記の黴開く
何も置かぬ一枚板の風薫る
体温を測るひととき百合匂う
夏帽子ポケットの尻ふくらます
一冊の本に招かれさみだるる
番号の札を持ち合う端居かな
学習のはじめトマトをキャッチする
かき氷優先順位入れ替わり
冷酒飲む死んでも生きている人と
一日の顔を飛ばせり扇風機
見えぬまで影を見送り立葵
梅雨鴉かがやく羽根を残しけり
潮騒へ傾いており短き夜
書けるだけ書き出してゆく夏至の夜
白南風が開く頁より読みはじむ
十河 智
 雲は広がるが、雨は降りそうにもない戸外。いつも持ち歩く本がある。浜辺に座り読もうと開けると風が吹いてページを捲る。句集かもしれない。論語のような金言集かも知れない。偶然を喜び、そこから読むことにする。

大津留 直
 白南風が開いたところを読みはじめたところが、面白くて、つい引き込まれてしまう。そんな偶然と必然の「あはひ」を感じさせます。まさに、それが俳句の道なのかもしれません。

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