香天集7月25日 岡田耕治 選
谷川すみれ
残されし梢にわかに紅葉す
瘡蓋を透かしていたる秋気かな
電波からついに脱け出す柘榴の実
黄葉や百年後を隣り合う
石井 冴
父の日の後ろと前に橋かかり
青田より母の筆箱出て来たり
白南風の匂うお薬手帳かな
風鈴を置いて隣人居なくなる
安田中彦
老女らが幼き遊びせり半夏
箱舟や而してぼくら立ち泳ぎ
山繭や人と遭遇してしまふ
ヒロシマや雀なにをか啄めり
夏 礼子
小判草一の風呼び千までも
梅雨最中メールの絵文字謎めきぬ
今日のこと今日する朝のレモン水
梅雨晴の地球儀の青まわしけり
楽沙千子
自分史に性のありけりサングラス
除湿機のフル回転に夏座敷
夕凪や厨に消えぬ酢の匂い
ジャスミンを目がけのばせる歩数計
嶋田 静
くるくると日傘まわして友の待つ
茄子五本友のレシピの通りとす
朝顔の花を数えて始まる日
ペダルこぐ風は代田のにおいして
永田 文
鳥どちへ子等へと枇杷の熟れはじむ
開け放つ縁に座布団青葉風
裏一面どくだみの白すがすがし
補助輪をはずし漕ぐ夏翔る夏
小島 守
梅雨晴間仕事を追えば追われけり
向日葵の畑となってしまいし田
夏休み子らの素顔を見ないまま
これ以上悪くはならぬ蓮の花
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