2021年7月2日金曜日

紙で切る指の血を吸い朝曇  耕治

 
島 善信
 何の仕事でか、せっせと紙を捌いています。その紙で指先を切りました。痛みのわりに傷口はきれいですが、その内にポツポツと真っ赤な血の粒が浮き出てきます。思わずその指を口に当てて外を見やると、暑さを予感させるように霞んだ風景が広がっています。紙の白と血の赤と、霞んだ緑が鮮やか。何をあくせく、ゆったり構えなさいと諭されているようです。

十河 智
 暑くなりそうな日の朝のスタート、まずコピーだったのでしょうか。紙で指を切ると、あとからじわっと血が滲み、大粒に脹れて落ちそうになる間際、大体その血を吸う。本能的、ごく自然な動きですが、紙を汚したくないというとっさの判断もあったかも。生温かい、金気のある血の臭いと味が、朝曇の空気に広がる。

桑本 栄太郎
 大量の紙を扱う事務仕事では、紙の端で指を切る事がよくありますね?新札の事を、「指の切れるような一万円札」などとも云い紙は結構鋭利な刃のようです。季語の「朝曇り」は良く晴れていて、午後から暑くなる時の一時的な曇りであり、指の血を吸いながら「さ~!今日も忙しくなりそう!」との意気込みのようですね!!。

大津留 直
 買ったばかりの本など、捲っていると、私もよく指を切ります。「朝曇」との距離感が心地よい。

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