2021年8月19日木曜日

潮騒や踊り口説きを浮かべたる  耕治

 
柳堀悦子
 海辺の町の盆踊りは風景でしょうか 踊りの輪と海の音 皆が集まりひとつになって踊り楽しんだことが当たり前であった時代を懐かしく思います。

小林千史
 潮騒に浮かぶというのが、不思議さもあり凄く納得もします。眼前の景でありながら時空を超えるものを感じました。

大津留 直
 「踊り口説き」とは、盆踊りで歌われる民謡の中で、歌詞が一連の物語をなしているもののことを指している。したがって、この句は、潮騒を聴いていると、そのような民謡の歌詞が聞こえて来て、まるで、潮騒がそのような物語を浮かべているようだという句意になるようだ。民謡とその場所の自然の密接な関係が思われる。まことに、芸能と自然と人間社会は、われわれが思っている以上に、深く関係し合っており、われわれは、その関係にもう一度立ち返ってみる必要がある。

十河 智
 毎年今の時期には、河内中が、空中を伝播する音頭の波に浮き足立つ。去年も今年も櫓は立たず、音頭を全く聞かなかった。まつりでも祇園祭やだんじりなどは音を出さない形で縮小挙行されるところもあったようだが、音頭は歌あってのもの、踊りながらみんな語りを楽しんでいる。手を打ち、合いの手を入れて一体感が出る。まさに踊り口説き、なのだ。
 この句の情景はどうなんだろうとまた考えた。このあたり(河内全体)では、小さい町内の児童公園から、学校の運動場、河川敷、ありとあらゆるスペースでそれぞれの規模の盆踊りが催される。今年は潮騒しか聞こえない浜辺も、立ってみれば、空気に染み込んだ音頭が聞こえてくるようで、波の寄せ返す動きもリズムに乗った足さばきのように思える。自分の足も踊りだしそうだ。

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