2021年8月28日土曜日

筆箱を開き色なき風を待つ  耕治

 
大津留 直
 私はふと、大学か高校の受験生が、筆箱を開けて、解答用紙が回って来るのを待っている景を思い描きました。その火照った頬は、それを少し冷やしてくれる風が、開けっ放しの窓から吹いてくるのを待っているのだと思います。そんな時代が自分にもあったことをふと思い出させてくれる句です。

野島 正則
「物思へば色なき風もなかりけり身にしむ秋の心ならひに」の歌にもとづくというこの季語。中国の五行思想から、春は青、夏は赤、冬は黒。秋は白だという。何ものにも染まっていない、白紙の状態は、やはり、これから試験の問題解答をかこうとしているように感じました。

仲 寒蝉
 色なき風、けっこう使うのが難しい季語ですよね。この句はすうっと入ってくる感じで、実に色なき風の本意にもピッタリな気がしました。

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