2021年8月3日火曜日

蚊遣香揺らぐときくる語りかな  耕治

 
大関博美
 子どもの頃は、田舎のさほど裕福でも無い暮らしだったと思うが、夏は蚊帳を吊って蚊取り線香を焚いて貰って居たように思う。まず二つ一組の蚊取り線香を一つづつにするのが難しい。湿気って無くて、上手く火が点くと先が赤くなった所から、煙がゆらゆら揺れながら、広がっていく。母の昔話が、ときどき深くなる眠気に混じって、遠くにきこえるのである。日中忙しく仕事をして居る親が、側に居てくれる一時。こうやって育んで貰ったのだとしみじみ思う。愛されていました。
 童謡のレコードを聞かせて貰いました。

大津留 直
 この句の要は、実は、「くる」という目立たない措辞だと思います。良寛の詩に、確か、「花開くとき蝶が来る。蝶が来るとき花開く」というのがあって、しびれてしまったことがあります。この詩が、春の陽光の親しさと歓びを的確に表しているように、先生の御句は、夏の夕方の涼しさのほっとさせる親しさと歓びを表しているように思います。

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