香天集1月23日 岡田耕治 選
石井 冴
隣り合うものと打ち解け草石蚕なる
小さくも対を愉しむ松飾
純愛の並んでいたり雪達磨
風花を呼び寄せている厨かな
玉記 玉
回転のレッスン残る龍の玉
海神はたった一枚開戦日
一頭の蝶が凍ててゆく脳
人が沸くところ春愁生むところ
加地弘子
紫の着物をまとい雪女
日の差して掌に受けている実万両
修理済む手毬の出臍よく弾む
寂しさに冬白菊の紅のいろ
砂山恵子
額から空を見ている寒すずめ
夢を読むことが仕事や初日記
段々と父似の顔に冬帽子
素うどんをうろんという地日脚伸ぶ
神谷曜子
白鳥や沼を童話にしてしまい
老友になるはずの人冬の蝶
冬の昼刑のごと歯を削られる
クリスマス綺麗に飾り一人なり
河野宗子
納豆を混ぜるあいだの思案かな
牛乳箱同じ高さのシクラメン
ちゃんちゃんこ朝一番の白湯含み
花八手大きく空を受けてあり
北村和美(11月)
玉砂利の鼻緒泣きつつ七五三
とびきりの言い訳残す野分かな
ヨーヨーの回転を曳く冬の空
一枚の袴着順に貸し出しぬ
北村和美(12月)
マフラーが走り出すベル五分前
古稀となる妣の襟巻き腰に巻き
冬の朝ひかり担いでジャンプする
新聞の四隅を揃え冬日向
古澤かおる
元朝やもう探し物する二人
蘭展の鉢の一つは無名にて
新しいスコップを積み初仕事
縁側に弟座る二日かな
田中仁美
またコロナ冬のバーゲン素通りす
大寒や視野の検査に星光る
渋滞を自転車で過ぎ大晦日
年詰まる研修医師の防護服
岡田ヨシ子
忘れいし携帯電話鳴る寒夜
助け人来るまで転び寒の庭
粥に入れどんどの餅の香ばしく
シルバーカーくの字に登る春の坂
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