香天集2月20日 岡田耕治 選
安田中彦
鬼やらふプルトニウムを誰やらふ
海に降る黄沙誰かに降る愁ひ
感傷をしづかに封ず薄氷
我といふ器に飽いて春鱏に
三好広一郎
一枚でふたりを包む毛布干す
羊水の味かもしれぬ春の水
寒椿唇の血も少し混ぜ
シュークリームの空洞の温暖化
加地弘子
豪快に食って太って春の土
早朝にバイクが帰り葱坊主
眼を馴らしここから蕨狩らんとす
詰め込めば押し上げてくる繁縷かな
砂山恵子
木村屋のアンパンにへそ目借時
疑わず肉球さらす子猫かな
アンケートの丸のまぶしき木の芽時
フーコーの振り子の孤独花曇
神谷曜子
一人だからこのまま歩く斑雪
昨日との分岐を探し春帽子
独活を煮る免許更新近づきぬ
春の雲残り時間を速くなる
小﨑ひろ子
雪降るやとおき世に梅ありしこと
雪国の便りはればれ洋箪笥
車出す水仙の咲く高さまで
野の果てに群れてゆくなり黄水仙
岡田ヨシ子
歩数のみ計るケータイ冬の空
寒風の窓を大きく送迎車
恵方巻買うために乗りバス一人
九十を九個としたり年の豆
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