香天集12月11日 岡田耕治 選
柴田亨
彼と我の棺の重さ冬に入る
位牌のみ手元に残り冬日向
シベリアとつながる冬の蒼穹へ
十二月老いの平穏猫の不在
三好つや子
悪童のえくぼに似たり柿の傷
左手に鋏なじませ冬に入る
冬日和遺品に椅子の設計図
十二月空と交信する巨石
夏 礼子
病む人の手のひらに置く榠樝かな
大壺に指あとのあり秋日影
ねこじゃらし風のかたちを遊びたる
黒猫のぬうっと釣瓶落しかな
加地弘子
冬の蝶陰の重さを日溜りへ
小振りながら月下美人の返り花
枯菊にせわしなく来るもののあり
大嚔しばらく犬の吠える闇
春田真理子
月光に吸い込まれゆく土の笛
つまだてて釜を開けり月夜の児
恍惚とあり三日月の低さにて
十六夜の柱に届くリコーダー
古澤かおる
チョコ味のサクマドロップ冬日向
石庭の力強さよ霜の朝
冬の日が差す病棟の父の窓
一日を割烹着にておでん煮る
大西英雄
除夜の鐘月にも届く静かさよ
二人して安らかに聞く除夜の鐘
子や孫と寿いでおり初日の出
観音の姿に立てり寒牡丹
玉置裕俊
癌告知年寄の日に受けており
たよりなき足に一枚落葉来る
冬木立先を抜き越す救急車
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。
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