2022年12月18日日曜日

香天集12月18日 玉記玉、石井冴、三好広一郎、久堀博美ほか

香天集12月18日 岡田耕治 選

玉記玉
さしあたり遺品の鞠をついている
一日を翻訳すれば太鼓焼
梟や相打てば即発火する
凍蝶は金平糖の突起から

石井冴
在宅を示す自転車六林男の忌
実を結ぶこれはやっぱりさねかずら
うす味に馴染み湯豆腐の不透明
冬あかね寂しきものにボタン穴

三好広一郎 
冬の虹いちばん好きな色がない
おはようのちいさな声や牡丹雪
中年やどのセータにも香辛料
近い過去芋蔓式に十二月

久堀博美
兄弟のような三個の藷もらう
海を見て暮らす嫗の大根漬
枯野のみひかりが残り暮れゆけり
よく動く輪飾を編む今日の五指

砂山恵子
三代の理系の家系寒昴
もくもくと来てもくもくとおでん食む
山茶花は集まるために咲いてゐる
訳も無く海を見に行く年の暮

宮下揺子
あかのまま見知らぬ人に会釈され
天高し黙食終えて鬼ごっこ
連れ合いと逸れし冬の動物園
有刺線に兵士十二月八日

小崎ひろ子
冬の日もさくらと呼ばれ無人駅
寒椿白き空より白くして
電線を伝う暖にもある格差
冬鴉われらの知らぬ声交わし

岡田ヨシ子
百枚の賀状書きたる日の遠し
冬至粥我にもわかる声のする
着ぶくれのメモせず消えし一句かな
歌合戦今も昔の演歌歌手
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

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