2023年1月1日日曜日

香天集1月1日 森谷一成、谷川すみれ、浅海紀代子ほか

香天集1月1日 岡田耕治 選

森谷一成
今生を問われ木の葉と無精鬚
夜咄のみかん廊下に転がりぬ
病棟に電波ふくらむ冬日和
よく笑う男が来たる十二月

谷川すみれ
冬紅葉ひとりになれば色匂う
てのひらに沁みる音階夕時雨
帰り花青写真にはないことを
そこなのか木の葉激しく震えけり

浅海紀代子(12月)
木の実拾い私に残る時間かな
ポケットにメモを増やせり十二月
転寝に部屋中の冷え貰いおり
猫の来て日向ぼっことなりにけり

辻井こうめ
片付けの流儀いろいろ花八つ手
数へ日の目瞑る事の二つ三つ
世事はさて耳良く動く炬燵猫
角打ちの口数少な冬帽子

浅海紀代子(11月)
月今宵川面に痛み流しけり
烏瓜命をつなぐ赤さかな
草紅葉いつもの人の遠会釈
包丁も握る手も錆び冬に入る

佐藤俊
頬に雨時雨はいつも胸の内 
クリスマスおもちゃとケーキの国に棲む
サイコロの転がる先の雪催 
極月や崩す積木の三角形

神谷曜子
青蜜柑揉み考えのまとまらぬ
着ぶくれる自分の姿風の中
妹にさとされてあり実南天
裏表なくて日の射す枯芒

河野宗子
日溜りは小さな花の会議室
寒鴉新築の黒めがけくる
ポンと手を叩いて散歩冬の朝
口数の少ない人の懐炉かな

田中仁美
葉牡丹の渦に金箔散らしけり
葛湯吹き色透き通る思い出も
息子来て何も言わずに林檎食む
生姜湯の母より届く日なりけり

吉丸房江
卯の歳の孫を真中に初写真
ひと飛びで行けるコロナの世界かな
我が庭の千両万両日を浴びて
召しあがれ糸島野菜土の味

藪内静枝
表札は故人のままに門飾り
木枯の空缶ひとつ吹きだまる
美しく玄関ふさぎポインセチア
重なりし銀杏落葉に陽のぬくみ
*しきじ・にほんご天王寺学習者・梁さんの作品。

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