俳句物語(2) 岡田耕治
冷素麺今日は三把の良き日かな 久保純夫
句集『識閾』より
私もパートナーも、どちらも家にいる日は、朝食を食べながら、昼食と夕食をどちらが担当するかをじゃんけんで決めることにしている。どちらが先に亡くなっても自活できる、そんな生活力をつけておくためである。パートナーと一緒になって間もなく十年、朝目が覚めたときに、そこに居てくれるだけでありがたい存在だ。
今日の昼は、自分が担当になったので、素麺を茹でることにした。いつもなら二把だけれども、今日は三把にした。
三輪素麺の指定の時間は、1分半から2分なので、1分半経ったところで、一本すくって食べてみた。なかなかいい塩梅なので、ザルに上げ、まずは流水で全体の熱を取る。その後、ボウルの中で力を込めてもみ洗いする。それを氷をたっぷり入れたボウルに移し、一気に冷やした。
水気を切った素麺を、一口サイズに指で丸めてガラス器に盛り、氷と青柚子の輪切りを散らす。夕べの残りの鶏の唐揚げをレンジで温め、冷蔵庫で冷やしておいた麺汁と薬味を添えて、二階のパートナーに声を掛けた。
「今日は素麺がたっぷり。何かいいことがあったの」とパートナー。
「あなたとこうして食事できることが、いいこと。よく一緒になってくれたね」と、喉元まで出かかったけれど、そんなことを言うのは、素麺に合わない。本音は、どこかのホテルでディナーを食べたときに取っておこう。
「いや、先週は60キロに迫った体重が、今朝は56キロまで戻ったから」
「あら、それはいい日ね」
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