俳句物語(6) 岡田耕治
風光る三年前の牛乳瓶 谷川すみれ
散歩の途中で水仙を見かけたので、切り取って牛乳瓶に挿した。この牛乳瓶は、2023年のコロナ禍の末期に、毎朝1本ずつ届けてくれていた牛乳屋さんが廃業することになったという知らせとともに入っていた瓶だ。店主が高齢の上、コロナ禍で大口の納入先からのご注文も減ってきたので、宅配のお客様には大変ご迷惑をおかけしますが、本日付で廃業させていただきますとあった。
それからは、買い物に出かけたときにスーパーで紙パックの牛乳を買って、それを一週間で飲み切るという形で牛乳と親しんできた。だけど、紙パックより瓶の方が美味しかったように感じるし、直接飲むと口当たりも滑らかだ。今でも、銭湯に行くとコーヒー牛乳を瓶ごと飲んで、あの感触を懐かしんでいる。
先日、その牛乳屋さんが、また宅配を始めるというチラシが入った。宅配の牛乳だけでなく、道路沿いの店舗を改装して、ソフトクリームも販売するという。電話で宅配を申し込むと、懐かしい店主の声で、「いや、娘が子育てが一段落したので、手伝ってくれることになりまして」と、嬉しそうな声が返って来た。
翌日、牛乳を配達し、新しい牛乳箱を取り付けに来てくれたのは、四〇代らしい細身の女性だった。
「おはようございます。牛乳屋です」
「ご苦労さま。日曜日も配達してくれるんやね」
「はい毎日配達させていただきます。もし前の日の牛乳が残っていたら、お声をかけさせていただきますので、よろしくお願いします」
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