俳句物語(5) 岡田耕治
部室からカレーの匂い春の雪 三好つや子
部室棟は校舎から独立しており、運動場側には運動部、その裏手には文化部の部室が並んでいる。春の気配の中に雪が舞い始めたので、早めに練習を終えた陸上部につづいて、ソフトボール部のメンバーも道具を部室に引き上げてきた。
そのとき、鼻腔をくすぐるカレーの匂いが漂ってきた。裏手、文化部の部室棟だ。どうやら演劇部の部室から匂っているらしい。ストッパーで半開きになったドアから覗くと、携帯用のガスコンロにかけた鍋で、キャプテンがカレーをゆっくり混ぜているところだった。
「どうしたの?」と聞くと、明日の卒業生を送る会で演じる劇がまだ中途半端なので、腹ごしらえをしてからまた練習を続けるつもりだと言う。
「外は雪が降ってきたよ」と声を掛けると、
「お世話になった3年生に、なんとか完成度の高い劇を見てほしいから」と彼女は答えた。
「それなら、私たちソフトボール部の2年生がカレーづくりを手伝うから、練習に戻って」と提案し、調理を担当することになった。
「だけど、カレーは作っても、ごはんはどうするの?」
「うん、ご飯を食べると眠くなるし、遅くなっても家で晩ご飯を用意してくれてるから。カレーは気合いを入れるためにルーだけ食べるわ」
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