2026年5月17日日曜日

香天集5月17日 湯屋ゆうや、三好広一郎、柴田亨、佐藤浩章ほか

香天集5月17日 岡田耕治 選

湯屋ゆうや
遠足の傷の手当を正しけり
鴉から慕われている立夏の子
メロン剥き勧めることを怠りぬ
初夏の机を清め手紙書く

三好広一郎
蛇衣を脱ぐ試着室はありません
初夏が待つ降りたホームの向い側
種蒔いて大地は天に近づけり
春のソナタ指は天から舞い降りて

柴田亨
甲羅干し水の明るき静止かな
もういない自転車少年木下闇
数知れぬ羽の誘惑藤の夢
桜桃忌二線抹消帳簿閉ず

佐藤浩章
吽形も口を開かむ炎天下
風涼し犬山城の廻縁
追手筋日曜市の声涼し
露涼し地蔵菩薩ををろがみて

牧内登志雄
夏日射ハシビロコウの動かざり
麦秋や秘密基地より青い空
鎌倉に谷地三方の若葉かな
一湾をゆるりとわたる緑雨にて

楽沙千子
夏祓社殿の闇に鳥さわぐ
花びらの風にあおられ花椿
蚕豆の程よくなりぬ天を向き
夏帽を目深にかぶり集中す

岡田ヨシ子
昼食をキャンセルし待つ春弁当
入所した友に俳句の五月号
俳句集初夏から語りはじめおり
ファッションを学び直せり夏ベスト

川端大誠
夏の風ダイヤモンドを駆け回る

川端勇健
映画観て余韻に浸る青嵐

川端伸路
朝昼晩揚げ物となる子供の日


〈俳句物語〉 岡田耕治
遠足の傷の手当を正しけり 湯屋ゆうや

 空の弁当箱がシンクのボウルに浸けてあるのを見て、今日の遠足は楽しかったんだと思った。塾のある日は別々に食べるが、今夜は幸平と夕食を共にし、話を聞こうと帰りを待った。

 午後八時、ドアが開いた。帰宅した幸平の額には、一枚の絆創膏。
「どうしたの」と訊くと、ジェットコースターの一番乗り競争をして、坂道で転んだのだという。
「痛かったでしょう。あ、少し血が滲んでるわね。貼り替えようか」
 引率の教員が貼ってくれた絆創膏をゆっくり剥がし、消毒液で優しく拭う。少し小さめの新しい絆創膏を貼り直しながら尋ねた。

「みさき公園は、久しぶりだったわね」
「うん、小三の時にお父さんと行って以来かな」
「閉園になるって聞いたけど、どうだった?」
「アトラクションはそのまま遊べたけど、動物園の方はちょっと寂しかったかな。面白かったのはジェットコースターと、パイレーツ。あと、お弁当も美味しかったよ」

「ありがとう。職場の同僚やPTAでも、みんな高学年になると、すぐシャッターを下ろしてしまうって聞くわ。幸平が何でも話してくれてうれしい」
幸平は照れたように言った。
「いや、お母さんがいっつも楽しそうだから」

*青空の穴からこぼれ天道虫 岡田耕治

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